会長メッセージ
令和5年7月22日の総会にて日仏医学会会長に選出されました安西尚彦です。2018年10月のフランス大使館で開催されたABSCIF 50周年記念式典でお会いした新谷英滋先生にご紹介を頂き、日仏医学会に入会させて頂きましたのが2019年1月という新参者にも関わらず、私の所属である千葉大学医学部薬理学教室の第3代教授でありました小林龍男先生が日仏医学会の第二代会長をお務めであったご縁(私は第6代薬理学教授)を重視して頂き、1949年設立という歴史ある日仏医学会の会長に選んで頂きましたこと、身に余る光栄であると感じますとともに、身の引き締まる思いがございます。
私は仏政府給費留学生として1999年から2001年というミレニアムの時に、南仏コートダジュールのValbonne Sophia AntipolisにあるCNRSのIPMC(分子細胞薬理学研究所)に留学しておりました。留学直前は北里大学医学部生理学にて助手を務め、腎臓のカリウム輸送の研究をしておりましたが、生理学領域でも猛威を振るった新規分子のクローニングは一段落し、一つの分子は単独で機能するのではなく他の分子と連携しながら働くという分子複合体という概念に移行する時期となり、プロテオミクス研究の先駆けであった酵母ツーハイブリッド法を用いたイオンチャネル結合分子同定という新規プロジェクトに従事しました。約2年の留学期間新規実験法の立ち上げに殆どの時間を費やし、no paperで帰国することにはなりましたが、フランス人の同僚からも「お前はフランス人以上に遊んでいるな」と公認されるほど、世界屈指の観光地であるプロヴァンス・コートダジュールでの滞在生活を満喫しましたので、ヨーロッパに留学しながら他の国に遊びに行く必要も全く感じず、また成果なく帰国することも全く苦ではありませんでした、負け惜しみですが(苦笑)。
もともと腎臓内科医でしたので、帰国後は生まれ故郷の千葉で透析病院に勤務し、悠々自適の生活をしようと思っていたところ、縁あって再び三鷹の杏林大学医学部薬理学の門を叩いたことで、そのまま基礎医学の道を歩み続けることとなり、南仏で十分にチャージしたお陰で帰国後は猛然と研究に打ち込んだことで、尿酸トランスポーターの新規分子同定をはじめとした研究成果をもとに10年後の2011年には獨協医科大学で薬理学講座主任教授となり、さらにその5年後の2016年には母校であります千葉大学に教授として錦を飾
ることが出来、今に至っております。
前会長である加藤敏先生の就任挨拶の中で、日仏医学会の歴史に関しての記載がございますが、1949年(昭和24年)に日仏医科会準備委員会ができた際、慶應義塾大学の三浦岱榮先生が会長に就任し、1953年(昭和28年)から今の名称となった日仏医学会、二代目会長の小林龍夫先生、続いて順に北本 治(3代目)、国重信彦(4代目)、土屋雅春(5代目)、武正健一(6代目)、岡島重彦(7代目)、橋本 清(8代目)、岩田 誠(9代目)、中谷陽二(10代目)、加藤 敏(11代目)、そして12代目の私へと引き継がれてきたバトンを次の世代に渡すまでの期間、日仏医学会の歴史と伝統とともに、未来に向けた日仏両国間の交流をさらに進めるため、より積極的な情報発信と新規会員の確保、時代に応じた運営体制の確立を目指したいと思います。
1976年から、在日フランス大使館、在仏日本大使館の後援を受け、東京とパリで交互に定期的に開催されてきました日仏医学コロックは、2019年11月8,9日(金、土)の第9回を最後にCOVID-19のため開催が見送られてきましたが、2024年のパリ五輪がおわる2025年には久しぶりの開催をパリでできればと考えております。その際には多数の皆様のご参加を期待しております。
日仏医学会の会則にあります「日仏会館の文化活動の一部として、日仏両国における医学の発展及び交流をはかる」ことを目指し、よき伝統を継承し、時代に応じた柔軟な姿勢で、持続的な学会運営体制を築くように務めたいと思います。
どうぞ会員の皆様の積極的な関与をお願い致します。
令和5年7月25日
日仏医学会 第12代会長
安西 尚彦
日仏医学会の概要
「日仏医学会」の前身である「日仏医科会」は、日本とフランスの医学交流を促進し、特に臨床方面において伝統的に優秀性を誇っているフランス医学を、わが国の医学に浸透させる目的をもって、故三浦謹之助(東大名誉教授)、故長与又郎(東大総長)、故宮島幹之助(慶大名誉教授)らの諸先人により1935年に設立されました。1982年名称を改め「日仏医学会」となり、今日に至っております。
学術の国際交流は日本のためにも世界のためにも極めて大切でありますが、ドイツ医学の前に開花して、その前の時代の医学で世界をリードした伝統あるフランス医学の過去及び現在を知り、相互に理解を深めることは極めて有意義なことと思います。
会員数:177名
これまでの活動内容:
1) 学会誌『日仏医学』(Bulletin Médical Franco-Japonais)の発行
2) 『日仏医学会会報』(Nouvelles de la Société Franco-Japonais de Médecine)の発行
3) 講演会開催(年2回:日本またはフランスの学者)
4) 日仏の医学関係諸事業への協力(当会及び会員)
・日仏医学コロック開催(1980年より隔年)
・医学生物学大辞典(マッソン)の日本語版刊行(1982年)
・医学辞典(ラルース)の日本語版刊行(1985年)
5) 日仏学者交換(日仏会館補助金による)